患者家族であり、自身も2回の提供を経験した松井さん。「見知らぬ誰かの命と、そこにある家族の未来に少しでも関われたことを、心から誇りに思っています」

PROFILE
松井 風輝(まつい ふうき)さん
奥様が骨髄バンクで移植を経験。
恩返しできるチャンスがきた!と迷い無く登録・提供することができたと話す。
2022年末梢血幹細胞提供
2025年骨髄提供
奈良県在住
妻が「再生不良性貧血」と診断されたことがきっかけです。
担当医から、今後の治療方針の説明を受けているときに「骨髄移植」と言う選択肢が示されました。「骨髄移植」については見聞きした事のある程度で正直、自分には関係のない事だと思っておりました。そして、選択肢として骨髄移植が必要になるかもしれないという現実に直面したとき、初めてその重みを実感しました。ドナーが見つかるかどうかで、人の命が大きく左右されるという事実を知り、強い衝撃を受けました。同時に、世の中には同じように移植を必要としている人がたくさんいることにも気づかされました。そこで、自分も妻の命を助けてもらうならば、他の同じ立場の人の力になりたいと思い、近所の献血ルームで詳しく説明を受け登録をしました。
人生で初めての入院でしたので正直不安でした。しかし、家族の協力があり、コーディネーターの方、病院のスタッフの方々がとても親切にしてくれたので、不自由なく快適に過ごせました。
事前に説明を受けていた通り、入院して白血球を増やす薬を注射しました。その薬の作用で腰の付近が痛みましたが、自分の中で細胞がどんどん作られているんだと実感していました。採取は、私の場合約4時間程度かかりました。この長い時間、身動きが取れず仰向けのまま終わるのを待っているのが案外大変でした。でもこの採取された細胞たちが今度は患者さんの中で頑張ってくれる!と思うと、自分の大変さなんて小さく思えました。採取後は特に痛みもなく、退院してすぐに仕事にも復帰しました。
2回目の通知を受けたときは、1回目と同じく恩返しができる!と言う気持ちでした。返しても返しきれない程の事なので、本当に嬉しく思いました。
全身麻酔で骨髄液を採取するので、事前にしっかりコーディネーターの方や、担当の先生から説明が詳しくあり、私は不安なく安心して受ける事ができました。当日手術室に向かうとき、いよいよ始まるんだ!と緊張はしていましたが、気がついたら終わっていました。痛みについても、事前に説明されていた程度で、腰の辺りに針を刺して採取しているのでその傷口が痛むのと、少し姿勢を変えるのに痛むというくらいでした。骨髄を採取しているので、採取後の検査では少し貧血気味の数値でしたが、問題なく退院も出来ました。そして今回も、退院後すぐに仕事に復帰しました。私の仕事は座り仕事なので少し不安でしたが、問題がなくて安心しました。
1回目の末梢血幹細胞採取、2回目の骨髄採取を終えて言えることは、やはり相手の患者さんが1日でも早く元気になってくれると信じる事です。自分の細胞・骨髄液が患者さんのもとに届き、そして患者さんにとって希望となることを信じています。
私の場合、妻が骨髄バンクで移植を経験しているので、迷い無く登録・提供することができました。患者側の気持ちも理解しているので提供して下さった方には本当に感謝しかありません。迷う気持ちも正直分かります。ただ提供して頂いた先に元気になっている方がいるのも事実です。なので、ぜひ大きな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
私は患者家族としての気持ちとドナーとしての気持ち両方を経験しました。この経験のおかげで、元気になった妻と日々楽しく過ごすことができております。先の見えない不安の中で、ドナーが見つかったときは本当に嬉しく思いました。だからこそ、自分にも提供の機会が巡ってきたとき、「希望を届けられる!」と思い、迷いなく返答することが出来ました。実際に提供を終えた今は、見知らぬ誰かの命と、そこにある家族の未来に少しでも関われたことを、心から誇りに思っています。自分の一部が誰かの人生をつなぐ力になれたということは、かけがえのない経験です。本当にありがとうございました。
※骨髄バンクでは、血縁・非血縁に関わらず、骨髄と末梢血幹細胞を合わせて2回まで(そのうち末梢血幹細胞は1回まで)提供できるとしています。
妻の病気がわかったとき、最初は現実を受け止めることができませんでした。担当医から「いつ倒れてもおかしくない状態です。」とも言われて「なぜ妻が」「どうしてこんなことに」と、理由もわからないまま不安と恐怖ばかりが押し寄せてきました。あのとき感じた不安と無力感は、一生忘れられないと思います。それでも、支える側として、妻の力になりたい一心で、前を向こうと必死でした。
妻にドナーが見つかった時は、嬉しかったです。見ず知らずの人のために提供をしてくれる方への感謝の気持ちでいっぱいでした。
移植当日は、いよいよ始まるんだ、という気持ちが大きかったです。実際にドナーさんから届いた骨髄液が妻へ入っていくのを見ると本当に嬉しく思いました。
妻の闘病中大変だったことは、家事です。当時我が家ではペットを多く飼っていました。その子たちの世話に加えて仕事、洗濯、妻の必要な物の買い出し、掃除とやらなければいけないことが多くありました。遠方に住んでいた親族達が手伝いに来てくれたときは、本当に助かりました。
いまは、移植後数値も安定しており体調も良くなって何不自由なく生活できています。