同僚の家族が白血病になったことをきっかけにドナー登録をした窪島さん。提供を経て、「人にちょっとすすめたくなった」と語っています。

PROFILE
窪島 春樹(くぼしま はるき)さん
2025年骨髄提供
東京都在住
公務員
登録をしてから1年ぐらいで、骨髄バンクから突然「ドナー候補に選ばれました」というSMSが届いたので、最初は「本物かな?新手の詐欺メールじゃないか?」と半信半疑でした。短期間で適合したことには驚きましたが、候補になったときは提供するつもりでいたので迷いはありませんでした。
とはいえ、通知が届いてから、自分なりにしっかりと調べました。骨髄バンクが発行しているパンフレットに掲載されている過去のデータによれば、国内での骨髄バンクを介した提供手術では死亡事例がなく、まれにある後遺症が残ったケースも人的な単純ミスがほとんどだったことがわかりました。また、骨髄提供の手術方法も、脊髄に傷をつけるものではないため、そもそも事故が起こりにくいものであると判断し、最終的に提供することを決めました。ただ、全身麻酔に関しては初めての経験だったので、副作用や意識がなくなることに対する恐怖感はそれなりにありました。
家族に伝えたときは驚いていましたが、妻は「本人が決めたのなら」と賛成してくれました。2人の子供たちは、最初は「手術?危ないんじゃないの?」というややネガティブなリアクション。「家族なんだから、僕たちにもちゃんと意見を聞いてほしい」とも言われましたが、リスクが限定的であることや提供の意義を伝えて納得してもらいました。
最終同意面談の際は、同席した妻も私も、医学的に気になった点をいくつか医師に質問したのですが、丁寧でわかりやすい説明をしてくださったのが記憶に残っています。この頃には、手術の不安というよりも、人体や免疫系の仕組みに興味が出てきてしまい、病院に置いてあった白血病・リンパ腫等のリーフレットを読んで色々と勉強させてもらいました。
私は国家公務員なのですが、ドナーとしての通院や入院に適用される特別休暇制度が整備されていたので、それを利用しました。患者さん側の都合で日程がずれ、業務繁忙期の入院になってしまったのですが、それでも職場の同僚や上司にはよく理解してもらい、「誰かの命を救えるのならば」ということで気持ちよく送り出してくれたので、とても感謝しています。
入院中は個室だったので、大変快適に過ごせました。上の方の階だったので、眺めもよかったですね。
不安だった全身麻酔も、数時間眠って起きたのと大差なし。採取後の痛みも思ったほどではなかったため、拍子抜けという感じでした。術後しばらくは痛むと聞いていましたが、採取直後でも痛みはほとんどなく、採取したところを押したら少し痛いかな、という程度。手術自体も短時間で終わったようですし、執刀してくださった先生が大変上手だったのではないかなと思っています。
誰かの命を助けたのだ、という満足感、達成感は確かにあります。ただ、患者さんが最終的に治ったかどうかは当然ながら教えてはいただけないので、「本当に助かったのかな、役に立てたのかな」という気持ちが2割ぐらいは残っているかな、というのが正直なところですね。
ただ、医師でもない限り、生きている間に誰かの命を直接救う経験ができることはないですよね。私の場合は想定しているほどの身体的負荷がなかったですし、それで誰か一人の命を助けることができるのであれば、やってみても決して損ではない経験だと思います。今ドナー登録に興味がある方や提供を迷っている方がおられれば、滅多にできない貴重な経験なので、気軽にやってみることをお勧めしたいですね。