春日井さんに適合のお知らせが届いたのは、ドナー登録から3年後。ご家族やお客様は理解を示してくれましたが、お父様が頑なに骨髄提供に同意しないというハードルがありました。そのときのことを語ります。
(この体験談は、日本骨髄バンクニュース第54号[2019年7月3日発行]でもご紹介しています)
PROFILE
春日井基弘さん
2014年3月、初めて献血をしたのをきっかけに骨髄バンクにも登録しました。「誰かのためになるならいいじゃん」と、献血の延長という感じで。 それから3年経った2017年5月、今でも鮮明に覚えています。誕生日の前々日に骨髄バンクからの電話。その数日後に適合通知の入ったオレンジ色の封筒が届きました。ある意味「ものすごいプレゼント」です。【必要とされている!】とすぐに内容を確認し、必要事項を記入し返信しました。登録時から「通知がきたら絶対に提供する」と心に決めていたので迷いはありませんでした。
提供に際してはどうしてもお店(理容店)を休むことになりますが、お客様に説明すると「頑張っといで!」「そういうことなら賛成だよ!」「しっかりやっといで!」と、皆さんにご理解いただけたのはうれしかったです。
母親や妹は賛成していましたが、心配性の父親を説得するのは大変でした。
父親が頑なに骨髄提供に同意しない理由を探って話をしていくと、「半身不随になる!」「リスクが高い!」・・・半身不随?この言葉でピンと来ました。父親がなかなか同意しなかったのは、どこで覚えたか間違った骨髄採取の方法でした。【骨髄は脊髄から採取する!リスクが高い!危険だ!】と思い込んでいたのです。採取方法等を説明したはずなのですが、もう一度『ドナーのためのハンドブック』を見せながら一から説明し、やっと同意してくれました。
当日までの健康管理、体調管理、特に最終同意書にサインしてからは「もう一人の身体ではない!」と強く感じ、普段以上に気をつけて生活しました。術前健診の通院も採取の入院も、担当の医師をはじめ看護師の皆さん、そしてコーディネーターの方のおかげで、採取当日もその後も不安や心配は全くありませんでした。
さらに、適合通知が届いた5月から平行して「今後ドナーとなる人のためにもきっと必要になる!」と、骨髄ドナー経験者の意見として、自分の住む自治体へ「骨髄移植ドナー等の助成制度事業」の導入を働きかけてきたところ、2017年10月から開始されることになりました。休業補償がないため、自営業の場合はこういった支援制度があると助かります。迅速に対応していただいた市長や各担当部署の方々には感謝しかありません。
自分が経験したこの骨髄ドナーのことをひとりでも多くの方に知ってもらえたら、また興味を持ってもらえたらうれしいです。「もう一度通知がきたらどうするの?」とよく聞かれますが、もちろん「また提供するよ」って迷わず答えます。