骨髄・末梢血幹細胞移植とは

  • 1. 骨髄移植

    骨髄は硬い骨に囲まれた腔内に存在するスポンジ状の組織で、 赤血球、白血球、血小板などの血液細胞をつくる臓器(組織)です。 何らかの理由で正常な造血が行われなくなった場合に、患者さんの骨髄を健康な人(ドナー)から提供された骨髄で置きかえて、病気を根本的に治していこうというのが骨髄移植です。
    自分以外の健康な人からの移植を「同種移植」、患者さん自身の細胞を使って行う移植を「自家移植(または自己移植)」といいますが、ここでは同種移植についてご説明します。

  • 2. 末梢血幹細胞移植

    末梢血幹細胞とは

    通常、骨髄に比べると、末梢血中の造血幹細胞は少なく、末梢血を集めても生着に十分な細胞数は確保できません。 しかし、造血因子である顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を健常人へ注射すると、骨髄より末梢血へ多量の造血幹細胞が循環してきます。
    G-CSF注射後、成分分離装置によって末梢血の一部を集めることで、十分な造血幹細胞を確保できるようになります。

    同種末梢血幹細胞の採取法

    ドナーにG-CSFの皮下注射をし、通常G-CSF投与開始4日目、5日目の2日間で、ドナーの静脈より血液分離装置を用いて血液を体外循環させ、末梢血幹細胞を選択的に採取します。通常150~200ml/kg(ドナー体重)の血液量が 分離装置により処理され大部分が返血されます。

    同種末梢血幹細胞移植の適応

    同種末梢血幹細胞移植は、主に白血病を対象に行われています。末梢血幹細胞では骨髄細胞と比較してやや分化・成熟傾向をもつ細胞が多く、造血を支える支持細胞が少ないという点があるため、骨髄形成能の下がっている重症再生不良性貧血にはあまり行われていません。

    同種末梢血幹細胞移植の利点

    • 移植後の造血回復が早い(白血球が1,000/μlを超える生着日は骨髄移植で16日、
      末梢血幹細胞移植では12~13日)。
    • ドナーは全身麻酔が不要である。

    同種末梢血幹細胞移植の欠点

    • 慢性GVHDの頻度は高いが、生存率や再発率との関係は不明である。
    • ドナーはG-CSFの投与を受けるために長期間(5~6日間)拘束される点と
      1回の血液分離に要する時間が数時間と長い。
    • 末梢血幹細胞採取で細胞数が不十分な場合には、骨髄採取も必要になる可能性がある。
    • G-CSF投与の長期安全性の確認が必要。
  • 3. 多様化する「同種造血細胞移植」

    最近では、骨髄移植以外にも骨髄機能の回復を図る移植方法が開発されています。
    骨髄中の造血細胞を末梢血液中に誘導し、成分採血器という器械で大量に採取し移植する「末梢血幹細胞移植」、 胎盤中の血液に含まれる幹細胞を利用する「さい(臍)帯血移植」など、移植は多様化しています。それにともない、 現在では「同種骨髄移植」という言葉よりは 「同種造血細胞移植」という言い方が多く用いられるようになっています。

  • 4. 「同種造血細胞移植」のための条件

    ドナーの方の骨髄、末梢血、さい帯血などを使って 患者さんの造血能を回復させるためには、いくつかの条件が必要になります。

    患者さん自身の骨髄を完全になくすこと。

    ※ミニ移植については、別項を参照ください。

    その他の造血細胞移植について

    患者さん自身の骨髄が残っていると、移植されたドナーの細胞を排除してしまいます。
    これはリンパ球という白血球の一種による免疫反応で「拒絶(反応)」といいます。
    そのために、移植に先立って強力な免疫抑制剤・抗癌剤の投与や大量の放射線照射を行います。
    これを前処置といい、強い吐き気や下痢などの副作用を伴います。

    患者さんとドナーの方の組織適合性が合うこと

    移植された骨髄、末梢血、さい帯血などの中に混じっている多数のリンパ球が引き起こすトラブルが問題になります。 ドナー側のリンパ球は患者さんの組織や細胞を異物であると認識して免疫反応を起こし、移植された細胞が患者さんの臓器を攻撃し始めます。これを移植片対宿主病(GVHD)と呼び、致命的な経過をたどることもある重大な合併症です。
    拒絶やGVHDは骨髄・末梢血幹細胞を提供するドナーと、それを受ける患者さんの間の組織適合性が合っていないと起こる免疫反応です。組織適合性抗原として最も重要なものとされているのがHLA抗原です。

  • 5. 骨髄・末梢血幹細胞移植の安全性について

    骨髄・末梢血幹細胞移植の際には拒絶やGVHDなどの移植免疫反応が致命的になることがあり、その他にも感染症、治療による臓器障害など様々な合併症があります。
    兄弟姉妹間での骨髄移植と比較すると、非血縁者間骨髄・末梢血幹細胞移植ではこれらの合併症の頻度も重症度も高いので、骨髄・末梢血幹細胞移植以外の治療法を十分検討した上で骨髄バンクに患者登録されることをお勧めします。

  • 6. GVHD(移植片対宿主病)について

    移植された骨髄中のリンパ球が患者さんの身体を異物として認識し、免疫学的に攻撃するのが移植片対宿主病(GVHD)という反応です。
    GVHDには移植後6~30日頃に発症する急性GVHDと移植後3カ月以降に発症する慢性GVHDがあります。
    急性GVHDは皮膚、消化管、肝臓の3つの臓器に症状がでるもので、それぞれ皮疹、下痢、黄疸が主症状となります。症状の強さとその組合せにより、全体としての重症度が決められています。
    慢性GVHDは皮膚、口腔、眼球結膜、肺気管支、肝臓、消化管など多くの臓器や組織に病変が起こるもので、膠原病と似た状態になります。長引くことが多く、日常生活にも支障をきたすことが多い合併症です。

    ※急性GVHDに関しては、全く無症状のものを0度、軽い皮疹だけのものを1度、皮疹に加えて軽い下痢や黄疸があるものを2度、下痢と黄疸が重症化すると3度、4度となっていきます。2度以上を重症GVHDといい治療が必要になります。3~4度の最重症GVHDは治療が困難で、 GVHDが致命的になったり、感染症を合併したりして致命的な結果となることが多いのが問題です。

  • 7. 移植後の生活

    慢性GVHDのない患者さんでは移植後1年を過ぎますと、健康な時と変わらない状態に回復する方がほとんどです。 しかし、慢性GVHDを合併した場合や、その他の後遺症が起こると、患者さんの日常生活に種々の障害が生じることがあります。
    具体的には、口腔内の痛みや違和感、眼球の乾燥感、皮膚の乾燥やこわばり、呼吸困難、慢性の下痢などが慢性GVHDの症状として起こりえます。
    移植まで、移植時、そして移植後に受けられた治療などの結果として、重要な臓器の機能障害が起こることも少なくありません。特に放射線照射などによる不妊は多くの患者さんに起こりえます。
    このような種々の問題について、主治医あるいは移植医の先生に十分な説明を受けてから、移植を受けるかどうかを決定してください。

  • 8. 白血病などの再発とGVHDの関係について

    これだけの強い治療をしても、残念ながら一部の患者さんでは 白血病などの元の病気が再発することがあります。
    移植時期が遅すぎたり、もともとの病気の悪性度が高い場合などに再発の可能性が高まります。
    移植後に合併するGVHDには白血病などの再発を低くする作用がありますが、これはドナーのリンパ球が患者さんの正常組織を攻撃すると同時に白血病細胞に対しても攻撃しているためと考えられ、
    移植片対白血病効果(GVL効果)と呼んでいます。
    つまりGVHDは強く起こりすぎれば患者さんの全身状態を悪くしますが、逆にまったく起こらなければ白血病の再発が起こりやすくなるという関係があります。

  • 9. DLI(ドナーリンパ球輸注)とは

    白血病の再発に対して意図的にGVHDを起こし、白血病細胞を減少させる治療が試験的に行われています。ドナーリンパ球輸注(DLI)と呼ばれ、移植後に再発した場合に骨髄・末梢血幹細胞提供ドナーからリンパ球を輸血するものです。
    DLIの効果が比較的高いタイプの白血病と低い白血病とがあるようですが、お一人おひとりの患者さんでの予測は難しいのが現状です。 また、GVLとGVHDはほとんど不可分の関係にあり、DLI施行時にはGVHDが起こるものという前提で計画すべきものといえます。 非血縁者間骨髄・末梢血幹細胞移植後にDLIが必要となった場合、疾患によって効果が期待できるものと期待しにくいものがあり、適応となるかどうかを医療委員会で審査し、GVHDの危険性への理解を含めて患者さんご本人の同意書を提出していただきます。
    適応と認められた場合、ドナーの方にDLIに応じていただけるかどうかをお尋ねいたします。

    ※ドナーの意思、健康状態などにより、DLIに応じられない場合があります。